胃と腸アトラスⅡ下部消化管 第2版


監 修         八尾恒良 福岡大学名誉教授・佐田病院名誉院長

編 集         「胃と腸」編集委員会

編集委員   小林広幸 福岡山王病院消化器内科部長

                  松田圭二 帝京大学医学部外科准教授

                  岩下明德 福岡大学筑紫病院病理部教授

本書の特徴
刊行以来好評を博してきた美麗な症例写真による消化管疾患のアトラスが,装いも新たに全面改訂。今版では最新の知見・モダリティを盛り込んだことはもとより,咽頭から大腸まで,各臓器でみられる消化管病変を網羅した。豊富な症例と美麗な画像によってまとめあげられた消化管疾患アトラスの決定版であり,本邦の消化管形態診断学のマイルストーンとなる書。消化管疾患診療に携わるすべての医師へ。Ⅱでは下部消化管病変を掲載。

A4 頁368 2014年 定価:本体14,000円+税 
[ISBN978-4-260-01747-3]

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目 次

小腸
1 先天性異常,解剖学的異常
2 炎症(感染性)
3 炎症(非感染性)
4 脈管性病変
5 全身性疾患に伴う小腸病変
6 その他の小腸病変
7 腫瘍・腫瘍様病変
  1)上皮性腫瘍・腫瘍様病変
  2)非上皮性腫瘍・腫瘍様病変
  3)ポリポ―シス症候群の小腸病変
大腸
1 先天性異常,解剖学的異常
2 機能異常
3 炎症(感染性)
4 炎症(非感染性)
5 脈管性病変
6 全身性疾患に伴う大腸病変
7 その他の大腸病変
8 腫瘍・腫瘍様病変
 1)上皮性腫瘍・腫瘍様病変
 2)非上皮性腫瘍・腫瘍様病変
 3)ポリポ―シス症候群の大腸病変
9 肛門部病変

第2版 監修の序
何事もパソコンやスマートフォンで簡単に検索できる時代であるが,診療に従事する医師は,多くの知識の獲得と臨床対応を求められ,慌ただしい日常を過ごしている.
「十年一昔」というが,『胃と腸アトラス』は初版の刊行から13年の歳月が経過した.この間,消化管の検索方法は著しい進歩を遂げた.また,日常遭遇する消化管疾患自体も時の流れとともに変貌している.
時代の変化に伴って「診断学」も進化を遂げる必要がある.「胃と腸」グループは新しい診断方法を取り入れながら,病変の見つけ出し診断にとどまらず,診断根拠となる画像所見と病理組織構築の対比に多大の時間とエネルギーを費やし,世界に冠たる消化管画像診断学のトップリーダーとしての地位を確立し続けている.
このエネルギーを是非とも“形”にしないと,“もったいない”という発想が『胃と腸アトラス』改訂のきっかけとなった.

『胃と腸アトラス』第2版は,芳野純治先生が雑誌「胃と腸」の編集委員長の頃に出版が企画され,編集委員会で承認され,私は監修の役を仰せつかった.その後,東日本大震災の影響で編集作業が暫く中断されたことや,一部の原稿の遅れなどの影響で随分予定を過ぎてしまったが,やっと上梓に至った.
いち早く原稿を書いて頂いた諸先生にお詫びを申し上げるとともに,日常的に1例1例を大切にして診療されている執筆者に敬意を表したい.また,「早期胃癌研究会」の運営委員,「胃と腸」の編集委員,そして,査読に時間と労力を費やして頂いた本書の編集委員,さらに私と本書の編集委員の我侭を素直に受け止めて,具体的な編集に努めて頂いた医学書院 飯村祐二氏に深謝したい.

優れた画像診断には検査者の技術,経験とともに,病態に関する識見が必要である.しかし,個人の経験や知識は限られている.
大判の写真をふんだんに使い綺麗に仕上がっている本書は,インターネットに向き合うより気楽で疲れない.診療の糧として頂くのはもちろん,暇なときに漫画の代わりに気楽に開いて頂けると,読者の“経験・知識”の一端を担えることになると信じている.そして,最終的には,われわれ臨床家のすべての根源でもある患者さんの診療に生かされることを祈っている.
1~2回の飲み会の費用を節約して本書を購入して頂くと幸甚である.

2014年晩春
八尾恒良

第2版 序
本書『胃と腸アトラス』の初版は,「胃と腸」誌に掲載された症例を中心に全消化管疾患を網羅した集大成の症例集として2001年に発刊されました.初版は,故・村上忠重先生や故・白壁彦夫先生らが築き上げた消化管診断学に従い,きれいなX線と内視鏡画像を中心に,必要に応じ超音波,CT,MRIも加え,可能な限り画像所見とマクロ・ミクロを対比させることにより,各疾患のX線・内視鏡所見の成り立ちとその形態的特徴が一目でわかる,当時としては画期的な書籍であったことは間違いありません.当然ながら今日においても,この本邦独自の消化管診断学の王道,すなわち良質な画像により正確で緻密な診断を行い,病理所見と対比して論理的・系統的に診断学を身につけるという本質に変わりはありません.しかしながら,初版発刊以降の消化管医学,特に画像機器の進歩はめざましく,新しいX線診療機器(デジタル画像,フラットパネル,三次元消化管CTなど),内視鏡診療機器(拡大内視鏡,NBI内視鏡,カプセル内視鏡,バルーン小腸内視鏡など)が続々と開発され,今日ではこれらの消化管機器が日常臨床でルーチンに使用されています.これに伴って,画像診断学も多様化するとともに飛躍的な進歩を遂げ,初版では取り上げられなかった多くの小腸疾患の鮮明な内視鏡所見が得られることとなりました.また初版に掲載した既存の小腸・大腸疾患においても,新たな診療機器による特徴的な画像所見,特に内視鏡所見が次々と明らかとなり,もはや初版は時代遅れの症例集と言わざるを得なくなってしまいました.このような状況から,本書は初版の監修から多大なご助力をいただいている八尾恒良先生立案のもと,数年間の準備期間を経て,満を持してその内容を刷新した改訂版『胃と腸アトラス』として発刊する運びとなりました.

本書では初版発刊以降に「胃と腸」編集委員(初版当時とは編集委員もほとんど一新されています)の施設にて新たに経験された症例を中心に,厳選されたきれいな画像を提供していただきました.また,カプセル内視鏡・バルーン内視鏡の登場により新知見の多い小腸疾患に関しては初版の2倍以上の項目数を設けて内視鏡画像を中心に掲載し,大腸疾患では既出疾患に新たに拡大内視鏡画像などが豊富に盛り込まれており,ほとんどすべての下部消化管疾患が網羅されています.さらに,上部消化管にまたがって病変が存在するような疾患(Crohn病など)に関しては,臓器別に項目立てして症例を呈示し,同一疾患の他臓器項目も検索しやすい工夫がされています.何よりも,厳選されたきれいな画像と病理所見が一体となった最高の書籍を編集できたものと自負しています.ぜひともお手元に置き,お気軽に,呈示されている美しい画像を繰り返し眺めていただければ,若手からベテランの消化器医に至るまで診断のお役に立つ一冊になるものと確信しています.

最後に,大変ご多忙のなか,貴重な症例を呈示いただいた諸先生方に厚く御礼申し上げるとともに,項目立案から校正までのすべてにわたって多大な協力をいただいた医学書院医学書籍編集部の飯村祐二氏に深謝いたします.

2014年4月
「II 下部消化管」編集委員
小林広幸
松田圭二
岩下明德

【書評:胃と腸アトラス】
「美しい写真がすべてを語る,素晴らしい書」 書評者:武藤 徹一郎(がん研有明病院 名誉院長)
「美しい画像に息をのむ,消化管疾患アトラスの決定版」 書評者:田尻 久雄(日本消化器内視鏡学会理事長/慈恵医大主任教授・消化器・肝臓内科)
「読んで,見て,とても楽しいアトラス」 書評者:千葉 勉(京大教授・消化器内科学)